思い出の品に、捨てるでも残すでもない行き先を
「父の刃物は、私たちには触ることすら禁じられていた物なんです。それを処分するなんて発想がそもそも持てなくて」。永源寺で木地師だったお父様の仕事場を前に、姉妹が二度目の冬を越えたときの言葉です。捨てるには重すぎる、残すには扱えない。その板挟みには、二択の外に出口があります。
手が止まるのは、道が二つしか見えていないからです
形見を手に取っては戻してしまうのは、優柔不断だからではありません。「捨てる」と「残す」しか選択肢がなければ、大切な品ほど答えが出ないのは当然の構造です。大津市の姉弟も「母の茶道具は、私たちには価値も使い方も分からない」と、四十九日から先へ進めずにいました。判断力の問題ではなく、道の数の問題です。
二択の外にある三つの行き先
- 次の使い手に渡す。 買取や橋渡しで、品物が使われ続ける先を探します。
- 語りを記録して見送る。 品物の由来をご本人やご家族から聞き取り、メモに残してから手放します。物は手元を離れても、話が残ります。
- 写真台帳で分けて確認する。 全量を撮影して番号を振り、離れたご家族には「欲しい物に印を付けるだけ」の形で渡します。
実際に第三の道へ進んだ品々(すべて実施済みの実例です)
- 木地師のお父様の轆轤と刃物が、木工を志す方の工房へ。「父の道具は捨てられなかったのではなく、次に回す道を知らなかっただけでした」。費用157,000円・買取94,000円(case 0048)
- お母様の茶道具を、稽古仲間への譲渡・買取・お別れの三つに三回かけて仕分け。「道具が稽古を続ける方の手に渡ると聞いて、母の茶道が終わらない気がしました」。費用148,000円・買取47,000円(case 0021)
- お祖父様の語りを聞き取りながら納戸を一間ずつ空けた豊郷町の三世代の家。「物と一緒に話が残ったので、納戸が空いたのに家が豊かになった気がします」。費用172,000円・買取38,000円(case 0037)
形見の扱いでよくいただく質問
骨董品の価値は分かりますか
専門の判断が要る物は、扱える先に確認したうえでお返事します。甲冑や古文書が残る家で、価値を確かめてから進めた例があります。その場で断定はいたしません。
趣味の道具の価値を見てもらえますか
見せていただけます。使う人が限られる道具ほど、専門の先に確認しないと値が分からないことがあります。木地師の道具を姉妹で見送った例のように、価値と気持ちの両面で進めます。
写真やアルバムはどうしたらいいですか
写真やアルバムは、まとめて一か所に集めてお渡しする形が多いです。その場で見始めると手が止まりますので、後でゆっくり見ていただけるよう分けておきます。
思い出の品はどう扱われますか
手放すか残すかはご家族に決めていただきます。私たちは物を並べて見ていただく時間を作るところまでです。母親の茶道具を三回に分けて見ていただいた例があります。

